第2章 PDF/A

PDF/Aは、PDF(電子ドキュメント)の長期保存(表示機器の仕様が変わっても表示される内容・色・見栄えは変わらずに再生表示できること)が目的の国際標準規格(ISO19005)です。近年は公文書の保存だけでなく、請求書などの証憑書類や工業製品の設計書面にも使われるようになっていますが、作成には様々な要求項目、禁止項目が定められており、作成されたPDF/Aファイルにも暗号化ができないなどの制限事項があります。

2.1 PDF/Aファミリー

PDF/Aの規格はPDF 1.7やPDF 2.0といった数字で表されるバージョンとは別枠で設けられています。現在はPDF/A-1、PDF/A-2、PDF/A-3、PDF/A-4があり、これらをまとめてPDF/Aファミリー (PDF/A family)と呼びます。(『PDF Tool API』はPDF/A-4に未対応です)

PDF/Aファミリーの仕様は、ISOの仕様書でそれぞれ規定されています。各規格に共通する要求項目として、メタデータ用のXMPの埋め込み、フォントの埋め込み、プラットフォームに依存しない正確なカラープロファイルの埋め込みがあります。

表2.1 PDF/AファミリーとISO番号
PDF/Aの種類
ISO規格
概要 主な特徴
PDF/A-1
ISO19005-1
PDF 1.4をベースにした最初のPDF/A規格ファイル添付(埋め込み)禁止
PDF/A-2
ISO19005-2
国際標準規格 ISO 32000-1(PDF 1.7)をベースにした規格PDF/Aに準拠するPDFに限り、ファイルの添付が使用可能
PDF/A-3
ISO19005-3
PDF/A-2をもとに拡張した規格あらゆる種類のファイル添付ができる。(例:PDFの元になった電子文書ファイルの埋め込み)
PDF/A-4
ISO19005-4
ISO 32000-2(PDF 2.0)がベースの規格(PDF/A-3の進化版)・ファイル添付
・フォームフィールドや3Dコンテント、JavaScriptのアーカイブ
・PAdESの簡素化

PDF/Aの作成には準拠レベルが定義されています。

準拠レベル概要対象のPDF/A種類
-a(Accessibility)各ISO規格にそれぞれ完全準拠が求められる。PDF/A-1、PDF/A-2、PDF/A-3
-b(Basic)ドキュメントの外観を確実に再現するために必要な機能のみ。(タグ付きPDFの規定と文字コードをUnicode値にマッピングする規定のどちらも満たさなくてよい)PDF/A-1、PDF/A-2、PDF/A-3
-u(Unicode)ドキュメント内のすべてのテキストにUnicodeマッピングが必要PDF/A-2、PDF/A-3
-e(Engineering)インタラクティブ3DコンテントをサポートPDF/A-4
-f任意のファイルを埋め込むことができる。PDF/A-4