本書は2001年から2002年にかけて開催したXSL-Schoolというセミナーのテキストをベースにしている。当時は、XSL-FO V1.0仕様が勧告になったばかりで、XSL-FOについての情報は少なかった。アンテナハウスはXSL-FOプロセサを開発し、製品の提供を始めたばかりであったので、XSL-FOの普及活動を有償のセミナーとして行った。
XSL-FOは、XMLを自動組版するためのものであり、XMLの市場そのものがニッチな上に、それを自動組版するというだけで市場はますますニッチとなる。こうしたこともあり、資料を商業出版社から本として出版するのは難しかった。それから10数年を経てプリントオンデマンド(POD)で本を販売できる仕組みができた。ちなみに、本書のPOD用PDF版もXSL-FOを利用する制作システム(CAS-UB)で自動生成されている。今回、テキストを刷新した上でPODにより出版する。
元となるテキストは2001年10月15日にW3C勧告となったXSL-FO V1.0仕様に基づいている。XSL-FO仕様は2006年12月にV1.1になったので、この機会にXSL-FO V1.1で追加された項目も含める。
最近、twitterをはじめとするインターネット上で、CSS3(Cascading Style Sheets Level3)の強化によって、いずれはCSSがXSL-FOにとって変わるのではないか、という発言がときどきみられる。しかし、XMLの用途は多様である。そのすべてがWebを目的とするものではない。さらに、仮にWebに出すとしても、Webページは紙のページとは本質的に異なるものである。Webページを端末で揮発性の画面に高速に表示することを出発点としているCSSと、静的なページという制約のある紙に印刷することを出発点としているXSL-FOは基本レベルで異なっている。
本書を一読されれば理解していただけるだろうが、ページとか冊子製本を想定することにより、スクロールでは不要な機能が数多く必要となる。CSSに現在のような紙を想定するページの概念をそのまま持ち込むということは、画面表示には不要な多数の組版制約条件を追加することになる。恐らく、これは時代に逆行する考え方であることを指摘しておきたい。