PDF、組版と文書変換のアンテナハウス株式会社
PDF、組版と文書変換のアンテナハウス株式会社
トップページ > PDF資料室 > ISO 32000に準拠するPDFってどんなもの?
本記事は2020/12/25 廃止しました。新しい記事をご覧ください。⇒ PDF 2.0って何? いままでのPDFとはどこが違うの? PDF 2.0対応で注意すべきことがありますか?
更新日: 2017/12/1
最近、お客様からの問い合わせにISO 32000に準拠するPDFの作成・編集ができるツールを探している、という要件が散見されるようになってきました。そこで、ISO 32000に準拠するPDFとはどんなものかをかいつまんで説明します。
PDFファイルはデジタル文書の配布形式の一つです。配布形式は書き手と読み手の間で受け渡されて利用されます。書き手と読み手は時間的・空間的に異なる場所で、それぞれ別のソフトウェアツールを使って、PDFファイルを利用します。現在ではインターネット上のサーバーのPDFを、不特定多数の利用者が、長期間に渡ってダウンロードすることも多くなっています。また、PDFファイルを作るツールとPDFファイルを読むツールの種類も非常に多様になっています。受け取ったPDF・ダウンロードしたPDFを正しく表示できない、などのトラブルを避けるためには、PDFの作り手のツールが標準規格に準拠して作成し、読み手のツールもそれを正しく読めることは重要なポイントです。このためには、標準規格自体が、安定しており、オープンで、誰でも規格に基づくツールを製作できるという要件が整っていなければなりません。
PDFの規格書は、現在、ISO(International Organization for Standardization)が管理する仕様書として出版されています。ISO規格になっていることは、前項で見たPDF規格への要件の点から大きな意義があります。
ISO標準としての最初の版は2008年7月にISO 32000-1: 2008 Document management -- Portable document format -- Part 1: PDF 1.7としてリリースされました。その後ISOの作業委員会で規格内容の見直しと機能追加作業を行い、2017年7月にISO 32000-2:2017 Document management -- Portable document format -- Part 2: PDF 2.0 が発行されています。現在の主流は、ISO 32000-1(PDF 1.7)であり、ISO 32000-2(PDF 2.0)が普及するにはしばらく時間がかかるでしょう。
PDF 1.7とPDF 2.0はPDFファイルに指定するバージョン番号に相当します。PDF 2.0というバージョンを指定したとき、PDF 1.7で使えなかった機能を使うことができます。逆に、PDF 2.0はPDF 1.7にある機能を包含している訳ではなく、PDF 1.7の機能の一部は使えません。つまり、PDF 2.0はPDF 1.7の上位互換になっていません。
二つの仕様書(Part 1とPart 2)の主な相違点は、参考資料の1にまとめていますのでご参照ください。
ISO 32000-1の規格書は英文で756ページにもなっています。このことからも分かるようにPDFの機能は膨大です。すべての機能を使えるように開発するのは膨大なコストがかかります。しかし、ISO 32000-1に準拠していると主張するには、規格書に記述されたすべての機能を使えるようにする必要はありません。次のように、規格書で明示的に要求されている項目だけをサポートすればよいことになっています。
PDFはAdobe が開発した技術です。Adobeは、PDFファイルをどのように作るかを、PDF Referenceと言う文書によって当初から公開してきました。
Acrobat 8まではAcrobatのバージョンとPDF Referenceのバージョンは次の表のように1対1対応となっています。
Acrobat のバージョン番号 | PDF 仕様書 |
---|---|
Acrobat 8 | PDF Reference, Sixth Edition, Version 1.7 |
Acrobat 7 | PDF Reference, Fifth Edition, Version 1.6 |
Acrobat 6 | PDF Reference, Fourth Edition, Version 1.5 |
Acrobat 5 | PDF Reference, Third Edition, Version 1.4 |
Acrobat 4 | PDF Reference, Second Edition, Version 1.3 |
ISO 32000-1は、PDF Reference, Sixth Edition, Version 1.7を元に規格の記述方法をISOの方式に沿うように書き直すと共に、内容も特定ベンダーに偏らないように改めたものです。従って、Acrobat 8が作るPDF 1.7とISO 32000-1に準拠するPDF 1.7は完全互換と言って良いでしょう。
しかし、AcrobatはバージョンXI(11)までバージョン番号があがり、さらにAcrobat DC、 Acrobat 2017という風に発展しています。この間、AdobeはAcrobatで使えるPDFの独自の機能を追加してきました。これはAdobe Extensionといいます。Adobe Extensionは、ISO 32000-1には規定されていない機能です。従って、Acrobatを使って作ったAdobe Extension の機能を含むPDFはISO 32000-1とは完全互換とは言えません。
なお、Adobe Extensionの多くはISO 32000-2に盛り込まれています。
本ページへのご意見・ご質問は、info@antenna.co.jpまでお気軽にお問合せください。