中堅・中小企業は2024年1月から施行される電子帳簿保存法第7条電子取引データ保存にどう対処するか(考察)

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電子帳簿保存法第7条によって、国税関係法人税や所得税(源泉徴収関係は除外)の納税者が電子取引を行ったら電子取引データをデジタルのまま保存しなければなりません

デジタル保存に際して満たすべき要件は財務省の施行規則で規定されています。この施行規則は改定されるたびに要件を緩和したり、新しい要件を継ぎ足してきたりしたため非常に複雑で分かりにくくなっています。

本ページでは、施行規則を読み解いて、電子取引データ保存の対応策をできるだけ分かりやすく整理してみます。なお、施行規則の第7条関連の解説は「電子帳簿保存法第7条 詳細」を参照してください。

国税庁の新パンフレット

2023年(令和5年)11月17日 国税庁Webサイトにある制度のパンフレット等に「システム導入が難しくても大丈夫!!令和6年1月からの電子取引データの保存方法」という新しいちらし(PDF)が掲載されました。

本記事では、この新しいちらしの内容も参照しながら、2024年1月1日からの電子取引データの保存対策を検討します。

電子取引データ保存方法の選択肢

財務省令によると、2024年1月以降の電子取引データ保存への対応策は、次表のとおり、L1~L4の四つの選択肢に整理できます。対応策L1~L4は、各列の〇で示した要件項目を満たすものです。

要件項目

L1

L2

L3

L4

施行規則の要件に関わらずに保存する

施行規則の要件を満たして保存する

可視性の確保

システム要件

検索要件の充足

検索3項目を設定

範囲指定で検索

組み合わせて検索

検索要件の充足不要

真実性の確保

電子取引データを書面に印刷して整理・保存

要※

不要

※ 2課税年度前の売上高が5000万円以下の事業者は電子取引データを保存して提示できれば良く、書面保存は要求されない。

施行規則の要件に関わらずに保存する

選択肢L1は、電子取引データを保存する際に、施行規則の要件に関わらずデジタルデータの保存を行います。これは、猶予措置と呼ばれるもので、2024年1月からの施行規則で初めてできます。国税庁の新しいちらし裏面で「準備が間に合わない場合はどうしたらいいの?」という見出しのもとに説明されている内容に相当します。

この選択肢を選ぶには、次の三つの条件を満たす必要があります。

  1. 電子取引データ保存の一定のルールに従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認めること。理由としては、人手不足、システム整備が間に合わない、資金不足などの理由で良いとされています。
  2. 税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求めに応じることができること。
  3. 電子取引データを印刷した書面の提示・提出の求めに応じることができること。

選択肢L1は電子取引データをデジタルで保存し、さらに印刷して書面としても整理しておくことになります。この選択肢を採用してメリットがあるのは社内のワークフローが書面ベースとなっている場合でしょう。

既にシステムを導入して施行規則の要件を満たして保存しているときは、この選択肢を選ぶことができません。つまり、逆戻りは認められないということです。また、会社の中で一部の業務の書類だけに猶予措置を適用し、他の書類はシステムを導入して保存するというのは認められない可能性が大きいでしょう[注1]

施行規則の要件を満たして保存する

施行規則の要件には、国税庁のちらしの表面の説明のとおり、「可視性の要件」と「真実性確保の要件」の二つの柱があります。施行規則の要件を満たして保存するにはこの両方を充足しなければいけません。

可視性の要件

ひとつめの柱である可視性の要件には、①システム要件と②検索要件があります。

  1. システム要件とは、電子取引データを保存するシステムの概要を記載した書類を備え付けたうえにモニターなどで表示・確認できるようにしておくことです。
  2. 検索要件とは、電子取引データを検索できることです。

検索要件への対応策には、三つの選択肢(L2, L3, L4)があります。

L2は検索要件そのものを不要とする対応策です。これは次のどちらかの条件を満たす場合に適用されます。

  1. 2課税年度前の売上高が5000万円以下
  2. 売上高が5000万円を超える場合、電子取引データを印刷して日付および取引先毎に整理しておき、さらに電子取引データのダウンロードの求めに応じる。つまり、デジタル保存したうえで、書面で整理しておけば検索要件を満たさない保存ができます。

電子取引データを書面に印刷しないでデジタルのみで保存するためには、選択肢L3、L4のどちらかを採用する必要があります。国税庁の新ちらしには選択肢L3、L4の具体的な説明がありませんが、要件は次のようになっています。

検索要件を満たす保存では、まず検索のキーとして、①取引年月日その他の日付、②取引金額、③取引先の「検索3項目」を検索条件に設定できるようにしなければなりません。さらに、「範囲指定検索」、つまり、日付と金額は範囲を指定して検索できること、また二つの検索キーを組み合わせて検索できることという要件があります。

検索要件を満たすには検索機能をもつシステムを利用するのが基本です。そして、電子取引データを、1件ずつそのシステムに登録する時に、データとともに検索キーをシステムに入力・設定する必要があります。実際に登録作業の運用を始めると、この検索キーの入力・設定に一番労力がかかります。

L4は税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に 応じることができるようにしている場合、日付と金額の範囲指定検索と、二つの検索キーを組み合わせて検索できることという項目が不要になるというものです。しかし、これはデータベースシステムを使えば簡単にできるので、実質的には意味がないでしょう。

結論として、電子取引データをデジタルのまま保存するなら、選択肢L3を採用するのが原則です。

真実性の確保

二つめの柱である、「真実性の確保」は施行規則には、次の四つの方法のいずれかを充足することが要求されています。

  1. タイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
  2. 当該取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付すこと。
  3. 訂正または削除ができないか。あるいは訂正削除の事実と内容を確認できるシステムを用いて取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
  4. 正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、 当該規程に沿った運用を行うこと

国税庁のちらしの真実性の確保の項では上記の①~③の説明がなく、④事務処理の規程のみ説明されています。つまり、事務処理規程で運用するのが現実的と認めているわけです。なお、①~③についての詳しい説明は「電子帳簿保存法第7条 詳細」をご参照ください。

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【まとめ】電子取引データは施行規則の要件を満たすデジタル保存が望ましい

電子帳簿保存法の施行規則に従って電子取引データ保存を行う方法にはL1~L4の四つの選択肢があることを説明しました。

国税庁の新しいちらしでは、電子取引データの保存が「難しくない」ことを強調しようと努めたためか、四つの選択肢の中でL1とL2のみ紹介されています。この二つは、電子取引データをデジタルで保存しながら、一方で電子取引データを印刷した書面としても整理して保存する二重の保存なので効率的とはいえません。

また、電子取引データを書面に印刷して保存するのはデジタルトランスフォーメーション(DX)に逆行しており、企業内の取引情報処理の効率化・生産性向上という観点からみると望ましいものではありません。

企業にとって本当に必要なのは社内ワークフローのデジタル化を進め、それによって業務の生産性を高めることです。そうした観点からは、選択肢L3の検索要件を満たしてデジタルのまま保存する方策の採用が望ましいでしょう。

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