電子帳簿保存法第7条 詳細
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電子帳簿保存法(旧)第10条(施行日:令和元年12月16日)と、電子帳簿保存法第7条(施行日:令和4年1月1日)を比較しながら、どのような違いがあるのか説明します。
また、法律施行規則(令和4年1月1日施行)にある保存要件について、および今後施行される法律施行規則(令和6年1月1日施行予定)について説明します。
1.電子取引の取引情報に係る法律
電子帳簿保存法は法人税・所得税の保存義務者が電子取引を行った場合、その取引情報を保存しなければならないと定めています。
電子取引とは、法第2条第5号において、 「取引情報(取引に関して受領し、又は交付される 注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。) の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」と規定されています。
旧第10条 | 第7条 |
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第十条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。 |
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。 |
旧第10条では、電子取引における取引情報を書面(紙)に出力し保存することも認めていました。
第7条では、電子取引における取引情報は電磁的記録で保存することを求めています。
2.保存にあたっての措置(令和4年1月1日~令和5年12月31日)
保存の措置は施行規則第四条(令和4年1月1日施行版)に定められております。
電子取引の保存要件として、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つを満たす必要があります。
真実性の確保
以下のいずれかの措置をおこなう必要があります。
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
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次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、
当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、 速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの 各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
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次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
- 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
- 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
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当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、
当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
なお、授受したデータにより複数の改ざん防止策の方式を混在させても構いません。
- 用語解説
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真実性:保存された取引データが改ざんされていないことを指します。
真実性の要件は4つの項目のいずれかの措置を行うこととなっていますが、一般的にタイムスタンプを付すにはタイムスタンプ用のシステム・サービスのコストがかかります。 そこでタイムスタンプの要件を選択肢から除外した場合、「訂正または削除を行った場合に訂正削除ができない/履歴が残るシステム等を使用して取引情報(取引書類)の授受及び保存を行う」もしくは「訂正および削除の防止に関する事務処理規程を作成して規程に沿って運用する」ことが選択肢となります。
前者の「訂正削除ができない/履歴が残るシステム」は、EDI取引を行うシステムや、取引情報の授受機能や保存要件を満たす機能のあるクラウドサービス等を指しますが、社内では様々な方法で取引書類の提出/受領を行っていますから、すべての取引に対して要件を満たすシステムで取引を行うことは難しいかもしれません。
そういった場合は後者の事務処理規程の作成しておき規程に沿った運用をすることで、真実性の要件を確保することができます。
可視性の確保
保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンターおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、 画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと。
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取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索条件として設定できること。
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日付または金額の範囲指定により検索できること。
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二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること。
※税務調査の際に電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、範囲指定および項目を組み合わせて設定できる機能の確保は不要です。このほか、基準期間の売上高が1000万円以下の場合、電子取引データのダウンロードの求めに応じるなら検索要件は不要です。
- 用語解説
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可視性:保存された取引データの表示・検索ができることを指します。
可視性の要件は、取引データ保存用のシステムを使用しない場合は、ファイル名に検索要件にある取引日、取引先名、取引金額等が含まれるようにしておき(例:20230921_アンテナハウス株式会社_100000.pdf など)、「取引先」や「各月」など整理されたフォルダにファイルを保存しておくことがあげられます。
一般的にファイルを整理されたフォルダに保存しておくことは取引書類を管理するうえで行っていることが多いと思われますが、ファイル名を保存要件のように変更することは手間がかかると感じるかもしれません。
そうした場合は PDF の情報を読み取って検索要件にある取引日、取引先名、取引金額などの項目を自動的に入力できるシステムを利用すると効果的です。
令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」
令和4年1月1日~令和5年12月31日の間は、 電子取引データの保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等で保存要件を確保することができない場合に、 電子取引データを書面に出力して保存しておくことが認められています。
3.保存にあたっての措置(令和6年1月1日~)
保存の措置は施行規則第四条(令和6年1月1日施行版)に定められております。施行規則令和6年施行版では令和4年施行版と比べ、第四条の第1項と第3項に変更がありました。
真実性の確保
タイムスタンプ要件の一部が変更になります。保存を行った者の記録に関する要件がなくなりますので特に運用上支障がない場合は保存者を記録しておく必要がなくなります。
令和4年1月1日~令和5年12月31日 | 令和6年1月1日~ |
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電子取引データにタイムスタンプを付すとともに、 電子取引データの保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。 |
電子取引データにタイムスタンプを付す。 |
可視性の確保
検索要件の全てを不要とする措置の対象者が見直されます。
令和4年1月1日~令和5年12月31日 | 令和6年1月1日~ |
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基準期間(2課税年度前)における売上高が1,000万円以下である事業者である場合であって、電子取引データの提示又はダウンロードに応じることができるようにしているときは、すべての検索要件を除く。
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基準期間(2課税年度前)における売上高が5,000万円以下である事業者である場合であって、電子取引データの提示又はダウンロードに応じることができるようにしているとき、又は電子取引データを出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている事業者であってダウンロードに応じることができるようにしているときは、すべての検索要件を除く。
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- 解説
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検索要件が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」から「5,000万円以下」に拡大されました。
また、電子データを保存しておきながらも書面を整理して管理して運用する場合においてすべての検索要件が不要となります。(書面を中心に取り扱う運用においても電子取引を行った場合は、電子データの保存は必要ですので注意が必要です)
以下のように書類をファイリングするなど整理しておき、税務調査の際には指定された書類を遅滞なくまとめて提示又は提出できるようにしておく必要があります。
- 「課税期間ごとに、取引年月日の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する」
- 「課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日の順に整理する」
- 「書類の種類ごとに、1又は2と同様の方法により整理する」
遅滞なく提示等ができるように書面出力して整理しておくといった準備を事前にしていなかった場合には、検索機能の確保が不要となるための条件を満たしていないと判断される可能性があることから、日頃から書面出力して整理しておくことが望ましいと考えられます。
しかし、検索要件が不要になるとはいえ、書面に出力しファイリングするには保管場所、印刷、作業そのもののコストがかかります。
電子取引の比率が多い場合にはシステムを導入することでそうしたコストを抑えることができます。
新たな猶予措置の整備
電子取引データの保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等で保存要件を確保することができない場合に、 電子取引データを出力することにより作成した書面の提示もしくは提出の要求に応じることができることを条件に、 保存要件に沿った対応は不要となり電子取引データを単に保存しておくことが認められます。
令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、令和5年12月31日をもって廃止され、新たな猶予措置では、出力書面の提示・提出の求めに加え、電子取引データについても「ダウンロードの求め」にも応じる必要がありますので注意が必要です。
- 解説
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電子取引データの保存と保存要件をまとめて考えてみますと、以下のような場合に猶予措置を適用することになります。
- 保存用システムの導入を行わない。もしくは検索要件に従ってファイル名の変更や整理されたフォルダに保存しない。
- 事務処理規程を作成しない。規程に沿って運用を行わない。
また、「電子データを保存しておきながらも書面を整理して管理して運用する」ことで検索要件が不要となることが掲げられていますから、 税務調査では遅滞なく提示等ができるように書面出力して整理しておく必要があるため、猶予措置とその検索要件は密接な関係にあると考えられます。
選択肢としては、保存要件へ対応するか、もしくは書面に出力して整理するか、にあると考えられるかもしれません。
しかしどちらの選択肢もコストがかかるのは避けられないことです。また、電子取引データは必ず保存しておかなければなりません。
書面に出力して整理せずにペーパーレス化することを選択するならば、低コストで導入がしやすいシステム、システム導入により運用へ影響が少なく定着しやすいシステム、自動入力により運用にコストがかからないシステム、などを導入することが保存要件の対応への近道であるといえます。
4.どのようなケースが電子取引の対象となるか
どのようなケースが電子取引の対象となるか、どの書類が保存の対象か、具体的な保存方法は?など
詳細を以下のページにまとめています。
『電子取引Save』を使用して電子取引の保存要件に対応するまでの5つのステップをわかりやすく紹介しています。
また「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のサンプルをダウンロードすることができます。
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